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新型コロナウイルスと女性交通運輸労働者の権利

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女性交通運輸労働者の権利と新型コロナウイルス

ジェンダー平等のニューノーマル(新たな日常)を目指して

 

交通運輸は性差の大きい産業である。コロナ禍は全ての交通運輸労働者に深刻な影響を及ぼしているが、女性交通運輸労働者には特定かつ追加的な影響を及ぼしている。

 

ILOが指摘するように、コロナ禍で既存の不平等がさらに悪化する可能性がある。これを阻止するためには、交通運輸業界(使用者、政府、投資家、組合を含む)が不平等を再生、存続、悪化させないためのジャンダーに配慮した対応を行うことが不可欠だ。

 

ITFはコロナ禍と女性交通運輸労働者に関して、使用者、政府、投資家に以下を要求する。

  1. 全ての意思決定機関における女性の参加  
  2. 収入保障と社会保障
  3. 衛生設備と適切な個人用保護具の供給
  4. 安定した仕事
  5. 利益よりもケアを
  6. 女性に対する暴力とハラスメントの撤廃
  7. 女性労働者に利益をもたらす新技術
  8. ジェンダーの影響評価
  9. ジェンダーに配慮した景気刺激策

 

これらは労働組合や女性代表との交渉を通じ、サプライチェーン全体において高い基準で実施されなければならない。

 

ジェンダーに配慮した対応は、ディーセントワークを求めて闘う全ての人の利益となる。

 

女性交通運輸労働者は、グローバル経済の血流であるサプライチェーンを動かし続ける労働者の誇り高き一員だ。

 

運転士、車掌、乗車券販売員、客室乗務員、パイロット、港湾労働者、船員などの職業に従事する女性は、国際社会がコロナ禍と闘う中で、市民生活に不可欠なサービスを提供している。保守、警備、清掃、事務など、交通運輸システムを稼働させるための、目に見えない仕事に就いている者もいる。

 

性別職務分離が見られる交通運輸産業では、女性労働者が対面業務や清掃業務に集中しており、より高い感染リスクに晒されている。この感染リスクの高さは、適切な個人用保護具の供給不足や女性が非正規労働者の大半を占めているという事実と相まって、女性が特にコロナ禍の影響を受けやすいことを示している。

 

公共交通、クルーズ船、民間航空等の部門の女性労働者や非正規雇用の女性労働者は既に深刻な影響を受けている。

 

ILO205号勧告は、危機管理対策・実践におけるジェンダーの視点、ジェンダー平等が確保された労使対話、回復を実現するためのジェンダー平等と女性・女児のエンパワーメントを求めている。

 

我々は労働組合として、コロナ禍において女性を守り、女性の権利を強化する責任を負っている。

 

コロナ禍を乗り越えても、これまでの「日常」にはもう戻れない。多くの女性交通運輸労働者にとって、これまでの「日常」とは、女性が社会保障の薄い非正規雇用に集中し、意思決定に参加したり、役職に就いたりすることが少なく、職場や家庭で暴力を受けたり、衛生面で人間の尊厳が傷つけられたりすることを意味してきた。これが「日常」であってはならない。

 

コロナ後は、全ての労働者に良質な雇用を保障する「ジェンダー平等のニューノーマル(新たな日常)」を生み出す機会である。

 

 

女性交通運輸労働者の権利を保護・強化すべき優先分野

 

全ての意思決定機関における女性の参加  

意思決定機関に女性が参加しなければ、女性が抱えている問題を分析し、戦略・政策に反映させることはできない。

 

ITFは使用者や政府に以下を求める。

  • あらゆる意思決定機関に常に女性を参加させること
  • モニタリングや情報収集に関する意思決定において、ジェンダー・パリティ(男女の人数や比率の平等・均等)を確保し、 UN WomenIL0、ユニセフの勧告に記載されている政策助言プロセスに反映させること。

 

収入保障と社会保障

外国人労働者、非正規労働者、非標準的な雇用形態の労働者(パートタイム労働者、下請け労働者、「ギグ」労働者等)を含む全ての女性労働者に対する経済支援 が不可欠だ。

 

使用者や政府は以下を行わなければならない。

  • コロナ禍で雇用を失ったり、一時的に影響を受けたりしている全ての労働者に所得を補償する。
  • 影響が直接的か間接的かを問わず、感染、隔離、介護や育児の義務等、コロナ禍の影響を受けている労働者(非標準的な雇用形態の労働者を含む)に有給休暇を与える。
  • (仕事のスケジュール調整を含め)労働者を感染から守るための適切な対策を講じる。その際、妊娠中や出産直後の労働者を含む感染リスクの高い労働者(とその家族)が収入を失わないようにする。
  • 失業保険、国の支援策、健康保険その他の社会的保護の適用を非正規労働者や非典型的雇用の労働者まで拡大する。
  • ユニバーサル(万人に対する)社会保護基金[G20 Labour_Employment PDF]の早急な設置に向けて世界が協力し、最貧28か国において政府による最低限の社会保障の確保の実施を担保し、低中所得国の社会保障制度を部分的に支援する。
  •  

衛生設備と適切な個人用保護具の利用

交通運輸労働者にとって、既に大きな問題となっている、衛生設備、清潔なトイレ、消毒剤、安全な飲料水の利用は、新型コロナウイルスの感染予防対策において不可欠である。

 

使用者や政府は以下を行わなければならない。

  • 労働者が懲罰を恐れることなく、ディーセントな衛生設備や十分な休憩時間を安全に利用できうるようにする。特に、交通運輸労働者がしばしば利用している公衆設備の多くが閉鎖されていることを考慮する。
  • 職場で厳重かつ定期的な清掃と衛生手続きを実施する。この実施のプロセスは全ての人を対象とし、かつ、月経、妊娠、身体障害、更年期、既往症等、交通運輸労働者の特定のニーズを考慮したものでなくてはならない。

 

感染予防のための以下を含む安全衛生措置の考案・実施に女性が関与しなければならない。

  • マスク、手袋、手指消毒液、水と石鹸等の個人用保護具を必要とする全ての労働者に供給する。
  • 感染を最小限に食い止め、ソーシャルディスタンスを促進する労働条件をジェンダーに配慮ししながら確保する。

 

安定した仕事

 

不安定な非正規雇用や非標準的な雇用形態に女性が多いということは、女性は適切な所得補償を受けられず、一時解雇されたり、所得を減らされたりする可能性が高いことを意味する。非正規労働者の中には、日々の生活のために、健康リスクや当局の通達にかかわらず、働き続けるしかない者も多い。外国人出稼ぎ労働者に至っては、多くの国で導入されているロックダウンの影響で、仕事に全く就けない状況に陥っている。

 

組合との交渉を通じて、しかりした保護措置や雇用条件が確保されることがなければ、多くの女性が交通運輸産業から締め出されるだろう。

 

ITFは使用者や政府に以下を求める。

  • ILO204号勧告に沿って労働者をインフォーマル経済からフォーマル経済へと速やかに移行させる。
  • 所得補償、医療・保健、休暇(病気休暇、産休・育休、介護休暇を含む)を全ての労働者に保障する。
  • 女性交通運輸労働者が新しい(正規の)仕事に就けるよう、リスキリング(再訓練)を行う。

 

利益よりもケアを

コロナ禍は女性に特に影響を及ぼす側面(妊娠、育児、無報酬の介護責任等)が多分にある。

 

ITFは使用者や政府に以下を求める。

  • 女性に追加的な負担がかかっていることを認識し、女性の収入と雇用を守るための追加的措置を講じること。
  • 妊娠中や出産後の女性に追加的な保護策を講じること。
  • 産休・育休中を含み、労働条件や継続的な収入を維持するための保護措置を講じること。
  • 有給の病気休暇や介護休暇を保障すること。
  • ロッククダウンで足止めされている女性のために生理用品や避妊具を供給すること。

 

女性に対する暴力とハラスメントの撤廃

国連によると、女性に対する暴力は、報告制度が存在する国において、25%以上増加している。

 

失業、継時的困窮、将来不安が増加すれば、女性に対する暴力も増加し続けるだろう。

 

隔離された労働環境において、女性が暴力を受けるリスクは高まる。対面業務に従事する女性が乗客から暴力を受けるリスクも高まるだろう。また、家庭内暴力や殺人・自殺等の潜在的可能性も上昇する。さらに、政府の財政悪化は被害者支援のサービスや活動に影響を及ぼす可能性がある。

 

ITFは使用者や政府に以下を求める。

  • 安全な通勤手段を確保すること
  • 労働者と乗客のための安全措置と報告体制を整備、実施 すること
  • 暴力とハラスメントに関するILO190号条約を早急に批准、実施すること
  • ジェンダーに基づく暴力に関連するサービス(業務)を不可欠業務に位置付けること
  • 衛生当局、警察、裁判所、福祉の連携を確保すること
  • ジェンダーに基づく暴力(誤った通念、偏見、過少報告を含む)に対する意識啓発運動を後援すること。
  • サポートサービスに関する情報提供を行うこと
  • シェルター、ホットライン、カウンセリングの需要増に対応するために、これらに対する財政支援を強化すること
  • 虐待者に監禁される状況を回避するため、避難宿泊施設をより利用しやすくすること
  • 当局に通報し、被害者を守るために利用しやすい制度を実施すること

 

女性労働者に利益をもたらす新技術

交通運輸の女性の仕事はデジタル化の影響を受けやすい

 

使用者や政府は以下を行わなければならない。

  • 全ての新型コロナ対策(新技術、自動化、デジタル化を含む)は、女性労働者に負担を加えるものではなく、恩恵を与えるものでなければならない。
  • 交通運輸の新技術の開発に関する協議に組合を重要な当事者として関与させる。その際、ジェンダーの影響評価が行わなければならない。

 

ジェンダーの影響評価

コロナ禍の影響は男女間で異なることを認識することが、効果的かつ公平な政策・対策を生み出すためには不可欠であり、女性のみならず、全ての人にとって良い結果をもたらすことになろう

 

ジャンダー別の情報(感染率の推移、経済的影響、育児・介護の負担、性的暴力・虐待の発生率など)を取得し、相互に関連する様々な要素(雇用契約、在留資格、ひとり親など)を考慮しながら、戦略と対策に反映させることが不可欠である。

 

ジェンダーに配慮した景気刺激策

景気刺激策を実施する際は、以下を確保する。

  • 新型コロナ対策として実施されるプロジェクトや融資、あるいは新型コロナ対策に変更された既存の資金提供に適用される、労使対話を通じて確認されたジェンダー影響評価やジェンダー基準
  • 保健、教育、低炭素型インフラの支出を(制限するのではなく)拡大する債務救済策
  • 安定的かつディーセントな雇用、平等なアクセス、ジェンダー平等を実現する社会保護

 

詳細な情報はITF書記局(women@itf.org.uk)へ

#ITFWomen #GenderEqualNewNormal #ThisIsOurWorldToo

 

 

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