労働者に対する暴力への対応は組合の仕事
ILO第190号条約(仕事の世界における暴力とハラスメントの撤廃に関する条約)の発効2周年を記念して、また、暴力やハラスメン トの問題の認知度が向上し、18カ国の批准が実現する中で、同条約に対する世界のコミットメントを祝福して、ITFは交通運輸に焦点を当てた 第190号条約のツールキットを作成した。
ジェンダー格差、失業、雇用の不安定性が高まる中で、女性労働者が暴力やハラスメントにさらされるリスクが増えている。コロナ禍でジャンダー平等は40年近く後退した。コロナ禍からの回復計画を「画一的」なものとせず、影響のジェンダー格差を考慮することが極めて重要である。女性労働者のニーズに対応するために、重点的な対策を講じる必要がある。 第190号条約は、批准、未批准にかかわらず、「より良い回復」のための社会的・法的改革にとっての重要なツールとなり得る。
仕事の世界における安全の欠如は、交通運輸産業を女性労働者にとって居心地の悪いものとし、同産業における女性の制度的排除を悪化させる大きな要因である。これらの要因は、「女性はこの部門に属さない」という概念を助長、維持、再確認させる。 ILO (2013年交通運輸政策概要) によると、「労働者に対する暴力は、女性にとって、交通運輸の仕事の魅力を減少させるとともに、既に交通運輸の仕事についている女性の維持を妨げる重要な要因である」としている。 この点は、10年近く経った今でも変わっていない。
ITFのツールキットは、2021年6月21日に発表された、国際産別組織(GUF)が合同で作成したツールキットを補完するもので、交通運輸労働者にとって重要な問題や条約の文言を扱っている。
第190号条約において、交通運輸部門は暴力やハラスメントに最もさらされやすい部門の一つとされている。ITFのツールキットはさまざまな形態の暴力やハラスメントを認識し、それらに対する誤った通念や偏見に対応するのを手助けするものである。第190号条約関連の組合の運動を支援、促進するための資料も含まれている。
女性活動家や組合が、女性運輸労働者にとって安全かつ平等な仕事の世界を確保するために、重要問題について意識啓発やロビーイング、労使交渉を行う際の有用なツールにもなり得る。
ツールキットの構成
このツールキットには、交通運輸労働者への影響が大きい問題に対する一連の解説や、運動を強化するためにターゲットや協力者を特定する方法についての資料が含まれている。
各資料は、交通運輸労働者にとっての問題とその重要性を理解すること、第190号条約の活用方法、組合の行動を促す方法に焦点を当てている。
このツールキットの目的は以下のとおり。
- 職場における暴力やハラスメント(ジェンダーに起因するものを含む)は、すべての交通運輸労働者、特に女性労働者や立場の弱い労働者にどのような影響を及ぼすかを示す。
- 第190号条約および第206号勧告と交通運輸労働者の関連性について啓蒙し、批准と実施の重要性を訴える。
- 組合が第190号条約と第206号勧告を啓蒙のツールとして活用する方法を示し、暴力とハラスメントに関する運動の計画、実施を奨励する。
- 批准および実施を促進しするために、交通運輸労働者との関連性が高い第190号条約の文言を活用し、使用者や他の関係者と交渉することを促す。
- 女性運輸労働者の役割を強調し、第190号条約の実効性を高める。