財政支援とPCR検査実施による国際線の再開を求めるIATA・ITF共同声明
世界保健機関(WHO)が新型コロナウィルス感染症はパンデミック(世界的大流行)に相当すると宣言してから7か月が経過した今も、航空産業は依然としてコロナ禍で最も影響を受けている産業のままだ。国際航空運送協会(IATA)は、航空産業がコロナ前の2019年レベルまで回復するには、少なくとも2024年までかかると予測している。コロナ禍において、乗客を本国まで帰国させ、サプライチェーンを動かし続け、極めて重要な医療機器を輸送してきた航空産業に対して、これまで行われてきた政府の支援は、数千人規模の雇用喪失を防ぐには十分とは言えない。全世界で約480万人の雇用が危ぶまれている。
航空産業が今も長期的なコロナ禍の影響を受けていることは明らかだ。明確かつ調整の取れた戦略を策定し、直ちに財政支援を提供し、乗客を対象とした体系的なPCR検査制度を樹立することで隔離措置を撤廃し、労働組合や企業と協力して航空産業の長期的な回復を支援することで、各国政府は航空を再構築するべきだ。
世界の航空産業には高度なスキルを有する労働者がいる。新型コロナウィルスへの各国の対応やコロナ禍からの回復にあたり、医療機器を輸送したり、重要なサプライチェーンを動かしたり、市民を本国に帰国させたり、キーワーカーの移動を可能にする中で、航空労働者の力が必要だ。航空産業のプロフェッショナルたちは、極めて大きな課題と自らの健康を害するリスクと直面しながら、働き続けてきた。乗客に対応する中で、客室乗務員がマスクを着用するなどの重要な安全対策を取っていた際に、乗客から妨害されたり、迷惑行為を受けるケースも見られる。客室乗務員の健康と安全は政府の最優先事項と見なされるべきだ。
航空会社や航空業界のプロフェッショナルたちは、航空サービスの停止期間に航空産業を支援してくれた政府に感謝している。約1,600億米ドル相当の救済措置が航空産業に対してなされたことは極めて重要であり、この措置がなければ業界が受けた経済的、社会的影響はさらに破壊的なものとなっていただろう。こうした支援にも関わらず、航空会社の収益は2019年に比べ62%も下がることが予測され、一日に30万ドルのペースでキャッシュを消化し続けている。 現在行われている賃金助成制度が間もなく終了することにより、雇用を現在のレベルで守り続けることは持続不可能になるだろう。航空産業をさらに支援するために、各国政府が直ちに行動を起こさなければ、極めて大きな雇用危機を誘発することになるだろう。
国がコロナ禍から回復できる力と回復のスピードは、グローバルな空の接続性と密接に関連している。したがって政府の介入と投資は、今、航空産業を支援することに留まるべきではなく、世界がコロナ禍から通常に戻ることができるよう、目的に叶った支援を行うことを担保するべきだ。
そこで、IATAとITFは世界の政府に以下を求める:
- 引き続き、航空産業を財政的に支援する。
- 全乗客を対象に、世界中で調和の取れた出発前の系統的なPCR検査制度を確立することを優先する。
- 搭乗中はマスクの着用などの生物学的研究による安全手続きに従うことの必要性を市民に伝え、妨害行為や迷惑行為の抑止策として、手続きに従わない場合には、可能性として処罰も考慮する。
- 航空産業がコロナ禍からより強く回復できるよう支援するため、テクノロジー、特に持続可能な航空燃料への投資を奨励する。
- 労働者の維持やスキルアップを含む、航空産業の長期的な回復のためのロードマップを策定する。