- 世界保健機関(WHO)と国際労働機関(ILO)が交運労働者のための新型コロナウィルス感染症に関する手続きの実施を確保するためのアクショングループを設置することに合意した。
- 今回の緊急会議は各国がオミクロン株の感染急拡大を受け、一方的に移動規制を再導入したことを受けて行われた。
- 世界の交運労働者向けにWHOの「イエローカード」スタイルのコロナワクチンに関する書類を作成する計画が進められている。
- 交運労働者の移動の自由の解決策については、1月に行われる国連事務総長の執行委員会でさらに議論される予定だ。
2021年12月13日(月)ジュネーブ(スイス)、ロンドン(英国)、ニューヨーク(米国):
世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム事務局長と国際労働機関(ILO)のガイ・ライダー事務局長は、世界中の交運労働者が自由に移動できるよう担保するため、両機関が交通運輸産業の主要組織とともに、アクショングループを緊急設置することにしたと確約した。
先週、陸海空の業界団体や労働組合とテドロス事務局長およびライダー事務局長が議論した結果だ。業界団体と労働組合は、オミクロン株の感染拡大をきっかけに、新たな移動の制限が設けられることにより、交運労働者と既に脆弱な状態にあるグローバル・サプライチェーンに悪影響が及ぶ可能性があるとして警告した。
国際航空運送協会(IATA)、国際海運会議所(ICS)、国際道路輸送連盟(IRU)、国際運輸労連(ITF)は、交運労働者の移動を制限することを避けるよう、調整することを各国政府の保健担当省庁に、早急に求めている。
テドロス事務局長はこの会議中に、アクショングループの作業は今週にも開始し、今後、IATA、ICS、ITF、IRUと定期的に会議を開催すると述べた。テドロス事務局長はまた、その他の重点分野として、ワクチン接種の証拠として交運労働者が使用できるよう、WHOが発行する医療パスポートのイエローカードを修正すると述べた。
アクショングループは交運労働者の権利を守るために交運業界が開発した既存の移動に関する手続きの実施を担保していく。WHOとILOはまた、2022年1月に行われる国連事務総長の執行委員会において、今回、交運関係の組織が提起した問題の解決策についてさらに話し合うと約束した。
年間20兆ドル以上の世界貿易を担う企業の業界団体と、世界のサプライチェーン全体で働く6500万人の交運労働者を代表する労働組合組織は、以前にも、オミクロン株の出現への緊急対応策として、各国政府が移動制限を再導入するという‘「反射的な」決定を行うことで、サプライチェーンが破壊され、世界経済の回復が遅れる可能性があるとの共通の懸念について表明していた。
WHOが「懸念される変異種」としてオミクロン株を認識して以来、その対応として世界の約56か国がコロナに関する移動制限を強化した。交運関係機関は、交運労働者の自由かつ安全な移動を保障できるよう、9月に世界の政府に対して発表した明確な手続きを実施するという約束を政府が果たせずにいることに 不満を表明した 。交通運輸関係機関はまた、オミクロン株の出現により、交運労働者の優先ワクチン接種を確保することがさらに重要になっていると述べた。WHOは、既にWHO自体が承認し、その実効性も証明されている船員と運転手のための移動および医療関係の手続きを採用するよう各国に奨励すべきだ。
ILOのガイ・ライダー事務局長は、次のように述べた。「世界の交通運輸産業とそこで働く労働者はコロナ禍で発生し、今も続いている大きなプレッシャーや困難に直面している。したがって、コロナ禍が交運労働者に与える影響を検討し、国際的に合意されたプロトコル(手続き)と基準を適用するよう政府に奨励する合同アクショングループが設置されたことは喜ばしい」
世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム事務局長は次のように述べた。「新型コロナウィルス感染症は依然として世界中で懸念される公衆衛生上の緊急事態であり、世界中で人類の健康と、国際貿易や移動に悪影響を及ぼし続けている。国境を越えて働く交運労働者の健康を保護し、緊急事態や人道的任務、不可欠な人員の輸送、本国送還、必須物資の輸送のため、移動の維持が極めて重要だ」
国際海運会議所(ICS)のガイ・プラッテン事務局長は以下のようにコメントした。「国境を越えて働く労働者が何とか例年に近い年末年始を過ごせるようにしたいなら、政府は早急に彼らの安全衛生を保護する必要がある。昨年と同じ厳格な渡航禁止令が多くの国で再び出され始めていることが深く懸念される。とりわけ、数百万人という交運労働者は2年近くにもわたり、その功績を殆ど認識されることもないまま、多大な犠牲を払わされている。今回、WHOとILOが世界の交運労働者の権利を保護するため、リーダーシップを発揮したことは大いに期待できるものであり、今後数か月にわたり、両組織と緊密に協力できることを楽しみにしている」
ITFのスティーブ・コットン書記長は次のように述べた。「交運労働者がクリスマスのピークシーズンを迎える中、グローバル・サプライチェーンへの負担を軽減するために共同で取り組むことが重要だ。足りないのは政府の対応だ。例えば、オーストラリアでは、コロナ禍が理由で発生したサプライチェーンの寸断について、交運労働者が非難されている。リーダーシップの問題であり、保護主義や政治工作の余地はない。WHOとILOが我々との協力を約束してくれたことに感謝し、全ての政府に交運労働者へのワクチン接種を優先し、彼らの自由で安全な移動を許可するよう要請する。さらに、ロックダウンと渡航禁止の繰り返しを終わらせることを真剣に考えるなら、政府はこの危機を終わらせるために必要なユニバーサルワクチン生産に対する知的所有権の貿易に関連する側面に関する協定(TRIPS協定)の一時免除などの動きを阻止する行為を直ちに止めるべきだ」
IRUのウンベルト・デ・プレット事務局長は、次のように述べた。「国境をまたぐ重要な輸送サービスを提供する何百万人ものトラック運転手やコーチ運転手は、各国政府が無調整で、しばしば見当違いなコロナ規制を設けている現状により、依然として苦しめられている。我々と協力し、適切な調整を取り、プロトコルに従って交運労働者の処遇を改善しようというWHOとILOからの積極的な支援を心強く思う」
IATAのウィリーウォルシュ事務総長は次のように述べている。「グローバル・サプライチェーンは依然として厳しい状況にあるため、オミクロン株出現に対する政府の対応が、長い時間を経て今やっと再構築されつつあるグローバル・サプライチェーンを再びリスクにさらすことがないようにすることが重要だ。したがって、世界の交運労働者の移動の自由を確保するために取り組むというWHOとILOによる今回の発表を歓迎する」
今日の危機交渉に出席した国際組織はまた、交運労働者の救急医療へのアクセスの確保と、WHOリストで承認されたコロナワクチンの優先接種も要求した。また、例えば、国境を越えて働く労働者に影響を与える国際的なワクチン接種状況やコロナの検査結果の証明書を証明するプロトコルの調整を取ることなどを求めた。さらに、交通運輸産業の回復を促進するために、各国の政府が可能な限りのあらゆる手段を講じて世界のワクチン供給を増やす必要がある点を強調した。
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