140万人の船員を代表する国際運輸労連(ITF)は、わかしおの座礁と乗組員をとりまく状況に対する懸念を強めていると今日、発表した。
先週、モーリシャス沖で日本の所有船「わかしお」が座礁し、船体が分断したため、原油が流出し、海洋環境が危険にさらされている。
ITF船員部会のデイブ・ハインデル議長は、当局も一般市民も性急に乗組員を責めるべきではなく、乗組員が法的な上限日数を越えて働いていたとの疑いを含め、何が事故発生の誘因になったのかを十分に考慮するために適切な調査を行うべきだと述べた。
「調査の結果を待つ一方、わかしおの乗組員がまるで事件発生に責任があるかのような報道が行われており、心を痛めている」
「ITFはモーリシャス当局がわかしおのスニール・クマール・ナンデシュワール船長を逮捕したことを憂慮している。また、チーフオフィサーも逮捕される可能性があると聞いている」
「世界中の人々と同様、原油の流出が拡大する中、汚染の脅威にさらされているモーリシャスの海洋環境とその脆弱な生態系についてITFも懸念している。しかし、この悲劇的事故に対する怒りは、事故発生時にたまたまその渦中にいた人々にではなく、事故発生につながった要因へと向けられるべきだ」
「わかしおの乗組員の殆どが通常の雇用契約期間を超えて乗船していたと報告されている。現在、行われている事故調査の結果を憶測するのは時期尚早ではあるが、世界中で船員がますます疲労を募らせていく中、人命や財産、環境が脅威にさらされているとITFは既に警告を発していた」
「コロナ禍で各国が導入した移動制限により、任務を終えた船員が下船し、代わりの船員が上船する船員交代を世界の政府は極めて困難でほぼ不可能なものにした」
「今回の事故について海運産業をいち早く非難した政府が、まさに、そもそもこの事故を誘発した可能性の高い人道の危機に目を背けてきたのと同じ政府であるという事実を知り、ITFは苛立ちを隠せない」
「政府はいいとこ取りはできない。船員の疲労が蓄積することで海難事故が発生する可能性を懸念するのであれば、世界中の政府は船員交代ができない問題についても心をくだくべきだ」
「ITFとITFに加盟する船員組合と海運業界は、今年2月から深刻化する船員交代危機について政府を啓蒙すべく、懸命に努力してきた。」
「海運業界の関係者、国連専門機関と国連が、グローバルコミュニティに対し、船舶の耐航性能証明書の期限が延長され、疲労をためた船員が交替してもらえないことにより、海運業界が大きなリスクを抱えていると警告してきた。我々は安全で安心な船員交代を促進するための詳細な手続きも政府に提案したが、今日でも、船員交代を可能にする安全な方策を率先して講じている国はごく僅かだ」
「会社が船員の本国送還のために高価なチャーター便の手配すら申し出ているにも関わらず、世界の大多数の政府が雇用契約期間を終了した船員の帰宅を拒否したため、何十万人という船員が世界中で船内に囚われたまま業務を継続している。モーリシャス共和国もそうした政府の1つで、自国民が帰国するための航空機の着陸すら拒否している。こうした状況の責任を政府は一体いつ追求されるのだろうか?」
「決断をなかなか下せず、他人に責任を転嫁しようとする政府が余りにも多く、これらの政府は船員の上下船を可能にしようとする海運業界の取り組みを積極的に頓挫させてきた」
「わかしおとその乗組員、モーリシャスの人々や海洋環境にもたらされた悲劇は、疲れ果てた人間が無期限に働き続けることを期待された際に何が起こり得るのかを改めて私たちに思い起こさせた。心身の健康を損なう形で船員を働かせ続けることは、持続可能でないため許容できない。ミスは起きるものだ。このような事故は起こるべくして起きたのだ!」
「今こそ海上貿易に依存する国々が、海洋環境を大切にする人々が、皮肉にも旗国であることから恩恵を受けてはいるが、いざという時に指導力を示そうとしない旗国が立ち上がるべき時だ。何か行動して欲しい。さもなければ、あなた方の手がまた油か船員の血で汚れることになるだろう」とハインデル議長は締めくくった。