船員交代の危機に関して沈黙を通すオーストラリア連邦政府は、貿易、オーストラリア経済、船員の命を危険にさらしているとITFとオーストラリア海事組合(MUA)は主張する。
「オーストラリアは、英国政府が9日に開催した船員交代危機に関する国際バーチャルサミットにも一切参加しなかった。豪連邦政府や規制当局が記憶に残る限りで最も深刻な危機に対応する意思がないことが再度示された」とITF会長を務めるパディ・クラムリンMUA委員長は語った。
オーストラリア海事安全局(AMSA)は、海上労働条約が規定する船員の本国送還に関する苦情を31件受けたことを認めた。同条約は、船員が契約満了後に下船し本国送還される権利を保障している。2020年3月1日以降、AMSAが拘束した船舶はSKSドイルズ号(ノルウェー籍)1隻のみで、“船員11人の雇用契約が切れていた”ことが判明した」とクラムリンは語った。
オーストラリアが批准している海上労働条約は、船員の最大乗船期間を11か月と定めている。しかし、コロナ禍に伴う出入国制限により、船員の本国送還や交代が困難になっている。
ITFと国際海運業界は、現在、世界で20万人以上の船員が契約満了後も船内で働き続けており、多くの船舶が毎日、オーストラリアに寄港していると主張する。
「疲労、精神的・身体的な問題が当たり前になりつつあり、緊急の人道的な対応が求められている。島国であるオーストラリアは海運に依存している。連邦政府は中心的な存在としてこの問題の解決にあたらなければならない」
「スコット・モリソン首相は州政府や州の衛生当局と協力し、船員交代の促進のために、国内の港に安全かつ効率的な入出国経路を確保しなければならない」
「モリソン首相はAMSA幹部の目を覚まさせ、深刻化する危機に直ちに対応するよう指示すべきだ。海運業界には意思があるが、政治のリーダーシップがない。ビジョンもない。国際社会の忍耐力も限界だ」クラムリンは続けた。
ディーン・サマーズITFコーディネーターは、AMSAは海上労働条約に反し、乗船契約の最大14か月までの延長を認めることで、海運産業に誤ったメッセージを送ってきたと指摘し、次のように語った。
「AMSAが引いた一線を越える動きがある。そして、海運業界は日々悪化する危機に悩まされている。ミック・キンリーがAMSA長官に再任された途端に最長14か月までの契約延長(船主が後日の本国送還を約束する場合はそれ以上の延長)が認められた。こんなことは許されない」
「AMSAの柔軟性は際限がない。コロナ禍は言い訳に過ぎない。オーストラリアは、国際社会の圧力に屈するまで最長17か月間の乗船を許すパナマのような便宜置国と同類だ」
サマーズによると、船長、一等機関士や乗組員からの支援要請がITFに大量に寄せられている。彼らは、船の安全性に問題があり、乗組員は疲労困憊し、事故が差し迫っていると訴える。
英国主催の9日のサミットには、米国、英国、デンマーク、ドイツ、サウジアラビア、アラブ首長国連邦等の13か国が参加し、船員交代促進のための7項目の行動計画に合意した。
「オーストラリアは何をしているのか?」サマーズは問わずにはいられない。
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