今週、「公共交通サービスにおけるディーセントかつ持続可能な仕事の未来に関するILO専門家会合」が開催されるが、ジュネーブに実際に赴いて参加する参加者がいる一方、世界各地からリモート参加する参加者もいる。
ILO専門家会合は、特定のセクターや問題に特化した政労使の3者構成会議であり、政労使とILOが当該の問題に関する行動を喚起することを目的としている。 ILOが公共交通に関する専門家会合を開催するのは1965年以来のことだ。
「公共交通労働者は、ほぼすべての国でコロナ禍の最前線に立っており、看護師や医師などの市民が仕事を継続できるよう、重要なサービスを提供し続けている。都市交通を動かし続けるために仕事を継続する中で命を落とした労働者も多い」と専門家会合で労働者代表団を率いるウォルサン・リエムは述べる。
「新型コロナウィスル感染症の感染拡大当初から約2年が経った今、政労使が集まり、世界中の公共交通でディーセントワークを確立するという課題を検討するのにこれほど相応しい時はない」とリエムは語る。
専門家会合では、コロナ禍の壊滅的な影響に対応するために職業安全衛生に焦点を当てるだけでなく、公共交通に影響を及ぼす様々な重大な問題を検討する。例えば、ギグエコノミーなどのインフォーマル(非公式)な仕事と非標準的な雇用形態の拡大、ジェンダーによる職域分離、新技術の影響、地球全体の温室効果ガスの排出量を削減する上での都市交通の役割、外注化や下請け化の影響、インソーシングと再公営化への新たな傾向などの問題も議論する予定だ。
交運労働者を代表する国際産別組織として、ITFは専門家会合の労働者代表団の中心的存在だ。労働者代表団には、韓国公共サービス運輸労働組合(KPTU)の国際部長で、ITF都市交通運営委員会の副議長を務める前述のウォルサン・リエムを筆頭に、都市交通を組織する主要ITF加盟組合をはじめ、国際労働組合総連合(ITUC)、国際公務労連(PSI)、グローバル労働研究所(GLI)が参加する。
労働者代表団は政労使での合意を目指し、2つの決議を提出する。第一に、労働者主導のインフォーマルなサービスと雇用のフォーマル化(正規化)により、グローバル・サウスの多くの都市の公共交通労働者の基本的な労働権とディーセントワーク、(温暖化対応に伴う)公正な移行を確保することを求める決議、第二に、コロナ禍からの経済回復を促進し、気候変動との闘いを支援するために、政府が公共交通に再投資する必要性を説く決議を提出する。
さらに、代表団は、公共交通に権利中心のアプローチを取ることを強く主張し、公共交通は全ての市民が平等にアクセスできてしかるべき基本サービスであるという認識の確立を求める予定だ。これには、女性や青年労働者を含め、民間企業や下請け先企業の労働者、インフォーマルサービスやギグエコノミーに従事する労働者など、都市交通で働く全ての労働者の基本的権利の保護も含まれる。
「労働者代表団は、政府や企業の代表団との建設的かつ実りある対話ができること、今後数十年にわたり、公共交通を繁栄させ、公共交通の仕事とサービスを支援できる結論や決議が会議で採択されることを期待している」とリエムは述べた。