2021年5月20日配信
本日、世界の交通運輸労組は、各国政府が世界貿易機関(WTO)で新型コロナウイルスワクチン特許権の一時放棄に賛成するよう呼びかけた。
インドをはじめとする世界中の国々でコロナ禍が猛威を振るっている。各国政府はインドや南アフリカがWTOに提案した特許権の一時放棄に賛成することが求められている。
一時放棄の提案は、新型コロナウイルスの「予防、封じ込め、治療」の観点から、TRIPS協定(知的財産権の貿易的側面に関する協定)で保護される知的財産権の一時放棄を求めるものであるが、一部の大国および経済圏が提案に反対している。
コロナ禍を撲滅する唯一の方法は、世界的な同時対応だ。そのためには、ワクチンの製造・供給・接種、治療、診断の全ての障壁を取り除かなければならない。
今日、ワクチン接種率が50%に達するような高所得国では回復の兆しが現れているものの、南半球では壊滅的な状況が続いている。致死率が高く、感染力の強い変異株 がインドやブラジルで猛威を振るっている。タイ、イエメン、中央アフリカ共和国、イラク、カメルーン、ベネズエラ、コロンビア、パキスタンでも感染が急拡大しており、先月の感染者数は2割増加した。
南半球の感染急増は全ての国の回復を脅かす。様々な移動制限や隔離措置が実施されているにもかかわらず、変異株はワクチンの大規模接種が行われている国にも出現している。全ての人の安全が確保されるまでは、誰一人として安全とは言えない。
世界保健機関(WHO)は、「ワクチン供給に衝撃的な不均衡が生じている」と訴えている。
一部の高所得国では2人に1人がワクチン接種を済ませているが、低所得国ではこの割合は驚くほど低く、500人に1人だ。米国、英国、EUは、全国民が2回接種するのに十分なワクチンを事前購入しており、最新の分析によると、全ワクチンの87%が富裕国に供給されている。一方、タンザニア、チャド、リビア、コンゴ民主共和国などでは、ワクチン接種が実施されていないか、接種率が0.1%に満たない。
一部の国がワクチン特許権の放棄やワクチン・治療・機器への普遍的アクセスに反対することで、ワクチン格差を拡大することは、この文明社会において許されない。
企業の利益が人命より優先されることがあってはならない。
ITFのスティーブ・コットン書記長は次のように語った。「今は緊急事態だ。6月8日にTRIPS理事会が開催される。それまでの三週間で正しい道筋をつけなければならない。理事会で特許権の一時放棄が合意されなければ、数百万人の命が奪われる」
「特許権の一時放棄に反対している国に我々は訴える。人命は企業の収益よりも重要だ。ワクチン、治療、機器への普遍的なアクセスのみが、救える命を救うことができる」
「世界は21日に開催されるG20グローバル・ヘルス・サミットに注目している。G20は正しい判断を下し、インドと南アフリカのWTOへの提案を支持しなければならない。いかなる代替案もコロナ禍からの回復を遅らせるだけだ。あまりにも多くの命が奪われている。全てのG20諸国は提案を支持しなければならない。それを実現させるために、世界中のITF加盟組合は闘う」