ITFは15日、シッピング・オーストラリア・リミテッド(SAL)がオーストラリア籍の船隊創設というオーストラリア政府の戦略に反対していることを非難した。
ITFカボタージュ・タスクフォースのクリス・ギブン議長は、SALの姿勢は「近視眼的であり、オーストラリアの国益を損なうものだ」と指摘し、次のように述べた。
「エバーグリーン、MSC、川崎汽船、HMM、CMA CGM、マースク、ハパックロイドなどの海運大手を代表するSALは、オーストラリアの経済、安全保障、海運産業よりも、外国の多国籍企業の利益を重視しているように見える」
「カボタージュはオーストラリアの国内取引、安全保障、持続可能な環境にとって不可欠だ。海運産業の雇用創出と技能開発にも貢献する。SALが自国籍船隊創設の戦略に反対しているのは、オーストラリアの国益を犠牲にして、海外の会員の利益を守ろうとしているからに他ならない」
SALは、利益を最大化するために最小限の規制、無税あるいは低税率、柔軟な賃金・労働条件を追及し、便宜置籍船(FOC)を運航する国際海運大手を代表している。
ギブン議長は、SALがオーストラリアのカボタージュ政策をチリの海運自由化と比較していた最近の記事は誤解を招くものであるとし、次のように続けた。
「自国籍船隊のメリットは明らかであるにもかかわらず、SALはチリのカボタージュ自由化を引き合いに出しながら、オーストラリア政府のカボタージュ強化に反対する記事を出した」
「しかし、ITFが面会したチリ政府の代表者は、ITFやITF加盟組合と協力しながら必要な改善を行い、自国船員を支援し、カボタージュを維持するというコミットメントを再確認している」
ギブン議長は、タイや南アフリカなどの国々が内航に自国籍船を導入することで国内取引を強化する重要性を認識していることも称賛した。
「SALの姿勢とは対照的に、南アフリカ政府はオーストラリア政府と同様に、コロナ禍において、国民生活に不可欠な輸出入の途絶に対して自国のサプライチェーンが脆弱であることを認識し、積極的な対策を講じた。南アフリカ籍船の戦略的船隊の創設・管理を目的とする南アフリカ海運会社法案の策定もその一つだ」
そして、SALが自国籍船隊の創設に反対するのは、オーストラリアの経済や国民に利益をもたらす公平な競争の場の促進よりも、国際海運会社の利益最大化を優先させたいためだと強調し、次のように結論づけた。
「ITFは、カボタージュが国家の安寧に不可欠な役割を果た していることを認識し、カボタージュ強化に取り組むオーストラリア政府を称賛する」「SALが目を覚まし、偏狭の視点を是正し、オーストラリアの海運産業の持続可能な発展を促進する政策を支持するよう強く求める」