ITF、国際海事使用者委員会(IMEC)、国際海運会議所(ICS)、シンガポール海事港湾庁(MPA)、シンガポール海運協会(SSA)、シンガポール商船職員組合(SMOU)、シンガポール船員組合(SOS)の合同プレスリリース
ITFとIMECは、船員交代の最良慣行を導入する国を支援するための「シンガポール海運官労使アライアンス・レジリエンス(SG-STAR)基金」に50万米ドルを寄付した。この基金は、シンガポール海事港湾庁(MPA)、シンガポール海運協会(SSA)、シンガポール商船職員組合(SMOU)、シンガポール船員組合(SOS)が100万シンガポールドルを拠出し、設置したものだ。現在、基金総額は168万シンガポールドル(約120万米ドル)に達した。
ITFとIMECのほかに、国際海運会議所(ICS)も専門技術の提供を含めて、SG-STAR基金を支援する。SG-STAR基金は、安全な船員交代の促進を目指す海運業界、労働組合、政府の意思を結集させた初の官労使のグローバル・イニシャチブだ。シンガポールを拠点とし、船員供給国のために使用される。
ITFスティーブ・コットン書記長は、SG-STAR基金について、世界の140万人の船員のために船員交代の危機を緩和させる可能性を秘めていると指摘し、次のように語った。
「この半年間、数十万人の船員が船内に閉じ込められたり、仕事ができずに自宅待機を余儀なくされたりしてきた。世界の船員のために、この人道危機を直ちに終わらせ、彼らを安全に乗下船させるための具体的な解決策が求められている。この官労使イニシャチブは、現在の行き詰まりを打開するための鍵となるだろう」
「特に、乗船前や船内での検疫措置期間の短縮を目的とする、認証医療機関からのPCR検査陰性証明書の当局および雇用主への提示を改善させる必要がある」
IMECのベラル・アーメド会長は次のように語った。「コロナ禍に因る船員交代の問題は、海事関係者の連携をかつてないほどに強化した。IMECは、問題の解決や指針の策定を目指すシンガポールおよび世界レベルの議論に参加、貢献してきた。このたび、SG-STAR基金に参加し、問題解決に貢献できることを嬉しく思う。この確固たるパートナーシップが長期的に実施される具体的解決策につながることを確信している」
ICSのガイ・プラッテン事務局長は、「コロナ禍で多くの船員が不当に足止めされている。このイニシアチブは、問題解決のために正に必要とされているプロジェクトだ」
ILOのガイ・ライダー事務局長は次のように語った。「ILOは、ITF、IMEC、ICSのSG-STAR基金への協力を歓迎する。SG-STAR基金は、必要とされるリソースを提供するだけでなく、官労使および国際的な取り組みを確保するものである。これこそ、この世界的問題への対応に求められているものである」
IMOのキタック・リム事務局長は、「この緊急の問題に対する具体的措置を講じるために、政府、業界、組合の総力を結集させたグローバルなイニシャチブだ。称賛に値する」と述べた。
2020年8月28日にMPA、SSA、SMOU、SOSの間で基金趣意書への署名が行われた後、問題解決に向けて利害関係者との調整を行うタスクフォースが設置された。タスクフォースはSSAの理事兼サービス委員会議長を務めるニチン・マシュールが率い、MPA、SMOU、SOSが初期メンバーを務める。まずは、フィリピンやインド等の船員供給国と協力しながら、検疫・隔離施設の適格性認定、PCR検査認証、PCR検査実施機関の「ホワイトリスト」作成、船員交代を追跡するためのデジタル・ソリューションの提供、船員が交代の手続きやガイドラインを理解するための双方向型研修制度の実施等を目指す。
SG-STAR基金ガバナンス委員会の議長はSSAのキャロライン・ヤン会長が務める。ガバナンス委員会は、MPAのクア・レイ・フン最高経営責任者、SMOUのメアリー・リュー書記長、SOSのカム・スン・フアット委員長、ITFスティーブ・コットン書記長、IMECのベラル・アーメド会長で構成される。SSA名誉会員でイーグル・アイ・センター最高経営責任者のラム・ピン・ミン氏が同委員会の上級顧問に任命された。
SSAのキャロライン・ヤン会長は次のように語った。「シンガポールの官労使で開始したSG-STAR基金は、船員が母国を出発してから乗船するまでの安全でスケーラブルな(規模の増大に適応可能な)道筋や、出発地や乗船地での船員の停留施設を確保するための労働供給国の取り組みを支援することが目的だ。ITFとIMECが我々のイニシアチブに参加し、寄付金の協力をしてくれたことを嬉しく思う。ICSも専門技術を提供してくれることになっている。安全な船員交代の一層の促進に向けて、志を同じくする、より多くの国際組織が加わってくれるのを心待ちにしている」