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P&Oフェリーの解雇:労働組合の抗議で労働者の保護法を実施できずにいる英国政府を国連が調査するよう要請

ニュース 記者発表資料

多くの組合と国際産別組織(GUFs)が国際労働機関(ILO —国連機関)に書簡を送り、P&Oフェリーに違法に解雇され、同社から残忍な処遇を受けた800人の船員を代表し、早急に介入するよう求めている。

組合は、P&Oフェリーが協議なく船員を違法に解雇したことを受け、英国政府が関連する労働法と懲罰的制裁を実施せずにいる事態は、結社の自由と団体交渉に関するILOの原則への重大な違反であると主張している。英国政府はまた、英国が締約国となっている国際法にも矛盾した行動を取っている。

 P&Oフェリーによる法的枠組みに対する攻撃を受け、国際運輸労連(ITF)、船員組合のノーチラス・インターナショナル、鉄道、海運、運輸労働者(RMT)、英国労働組合会議(TUC)、欧州運輸労連(ETF)。国際労働組合総連合(ITUC)などの労働組織は、英国政府に対する抗議を正式にILOに訴えた。

労働団体は、この問題を非常に深刻に受け止めており、ILOのガイ・ライダー事務局長が早急に個人的に介入することを要請し、英国が国際的に認められた労働基準を遵守していないことを指摘するようライダー事務局長に求めている。 

3月に警告なしに800人の船員を解雇した際、P&Oフェリーは法律に違反していることを認識していた。同社のCEOは同じことを何度でもするだろうと議会で証言したのだ」とITFのスティーブ・コットン書記長は語る。「P&Oフェリーは計算の上で言語道断な行為をして、逃げおおせると思っている」 

企業が金に物を言わせてトラブルを回避することを法律が可能にし、労働者には選択の余地は殆ど残されない。

P&Oフェリーは労働者の結社の自由と団体交渉権を侵害している。ズームで労働者を全員解雇し、手錠をかける訓練を受けた警備員を使って船員を船から降ろし、極めて低賃金の未組織労働者で置き換える前に、船員とその組合に協議するという法的要件をP&Oフェリーは公然と無視した」とコットン書記長は述べる。

コットン書記長は、英国の法律では、経済的なプレッシャーゆえに、労働者が使用者の法律違反に法的に異議を申し立てる権利を放棄せざるを得なくなる可能性があると組合は憂慮していると述べた。

P&Oフェリーは法律違反の『コストも折り込み』、仮に労働者がP&Oフェリーを訴え、法的に和解を勝ち取った場合に得られるよりも高価値の口止め料を含む一連の手当てをちらつかせ、船員を脅迫し、船員から法的な沈黙を買収し、船員の権利を握りつぶしにかかった」

コットン書記長は、P&Oの行動は非倫理的だが、現行の英国法では、組合がP&Oフェリーの行動に異議を唱える道はほとんどないと述べた。

ILOを通じて、労働者が有すると政府が主張する権利に、労働者が実際に依拠できるよう、英国政府に雇用法を強化することを要求している」とコットン書記長は語る。

「本当の意味でならずもの企業の抑止力になる法律が必要だ。労働組合が協議を受ける権利を侵害する企業の取締役の資格をはく奪することもITFは目指している。労働者に協議する義務を怠る使用者から、労働者が受け取れる賠償額に上限を設けるべきではない。賠償額の上限撤廃により、P&Oフェリーのケースに匹敵する犯罪に罰則が適用されるようにしたい。P&Oの行為は他の企業が行っている『解雇して再雇用(fire and rehire)』慣行を極端にしたような話だ」

コットン書記長は、英国政府は、組合と労働者が裁判所に差し止め救済措置を求めることができるようにするべきだったと述べる。そうすれば、会社が組合と適切な協議を行うまでの間、議論の的となっている解雇を一時停止し、解雇撤回の可能性を残すことすらできたと語る。

法律にこれを可能とする変更を加えるまで、英国はILO87号条約 98号条約に違反していることになる。ILO98号条約は、団体交渉機関を「奨励および促進」することを国に義務付けており、すべての「労働者は組合差別行為からの適切な保護を享受しなければならない」と規定している。  

声を上げる組合

 RMT労組のミック・リンチ書記長は次のように述べた。「POフェリーのような、ならず者資本家は、手っ取り早く金儲けするために法律や海上安全基準を切り捨てる」こんなことは許容できない。POフェリーのような会社は、ドバイにいる所有者に利益をもたらすために、躍起になって労働者の権利を攻撃しているが、ILOレベルで効果的な法的制裁を受けるべきだ」

ノーチラス・インターナショナル労組のマーク・ディキンソン書記長も次のように述べた。「自ら招いたこの危機から50日が経ったが、法律違反を認めたPOフェリーズのピーター・ヘブレスウェイトCEOは、組合員の違法解雇の代償を全く支払っていない。彼を辞めさせるべきだ」 

また、リビラ・スペラETF書記長は次のように語った。「英国政府が労働法を強制実施しなかったことは、欧州全域のならず者企業にとって、危険な前例をつくった。大臣が介入し、この混乱を解決すべきだ。このような冷淡かつ計算づくの労使関係慣行によって、他の労働者の生活が破壊されることがあってはならない」

英国労働組合会議(TUC)のフランセス・オグレディ書記長も次のように述べた。「いかなる労働者も使い捨てられることがあってはならない。しかし、英国の労働者保護は非常に弱いので、莫大な財力を持つ企業なら簡単に法律を回避することができてしまう」

「この全国的スキャンダルは、英国労働者の権利の転換点になるはずだ。しかし、ボリス・ジョンソン首相は、労働者の権利を強化するために長らく成立させると約束してきた雇用法案を実現できずにいる。労働者はこれ以上我慢できない。職場でより強く保護され、尊厳をもって処遇されてしかるべきだ。法律に違反した、ならず者企業は、現在の法律で許可されているよりも厳しい罰則と高額の罰金が化されるべきだ」

と国際労働組合総連合(ITUC)のシャロン・バロー書記長も述べた。「ディーセントワーク、結社の自由、団体交渉は、雇用法の中心に据えられるべきだ。労働法は労働者を守るものでなくてはならない。英国政府は今こそ、『解雇して再雇用』慣行を撲滅し、法律を強化し、遵守しない企業に厳しい制裁を課すべき時だ」 

編集者へのメモ

組合は以下の点で法律の改正を求めている:

  • 完全かつ有意義な労使協議が行われるまでの間、組合が違法解雇の有効性を一時的に差し止めることや、復職を可能にする。
  • 英国の港にサービスを提供するすべてのフェリーに関して、労使の産別団体交渉を確立するための法律を導入し、団体協約を法的に拘束力あるものとする(1976年賃金評議会法に基づいて)
  • 係争中の企業が承認を受けた組合に協議する法的義務を履行しなかった場合、二次的争議行為を禁止する法律を撤廃する。
  • 会社とその取締役が組合との協議を行わなかった場合、これを刑事犯罪とし、無制限の罰金を科せるようにする。
  • 協議を怠った場合の補償の上限を撤廃する(現在は、契約上の賃金の90日分を上限としている)。
  • 2006年のTUPE規則を改正して、完全かつ有意義な協議が行われるまで、労働組合が配転手続きの差し止め命令を申請できるようにする。
  • 1996年雇用権法を改正し、POフェリーが利用した「解雇して再雇用」手法を禁じる。
  • 乗り組む船舶の船籍に関係なく、すべての船員をあらゆる形態の差別から保護する、より強力な法律を実施する(船舶が英国外の船籍であっても、英国当局が介入できる余地を拡大する)。
  • 1986年会社取締役失格法を改正し、組合と協議をしなかった取締役を失格にできるようにする。

 

 

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