交通運輸労働者の権利と組合の要求に対する国民の支持は圧倒的であることが ITFの新しいグローバル世論調査で明らかになった。
マラケシュで開催される第46回 国際運輸労連(ITF)大会の10月13日(日)の開幕に先立ち発表された「2024年ITFグローバル世論調査」は、15カ国の 一般市民を対象に行ったもので、この15カ国で世界人口のほぼ4分の1を占める。
今年3月、調査会社YouGovが1万6632人を対象に実施した「運輸に関する意識調査」から、交通運輸労働者が果たす重要な役割と、彼らの権利を支持する声が大きいことが示された。
ITFの スティーブ・コットン書記長は次の通りコメントした。「労働者の権利に対する攻撃が常態化する一方で、企業の利益を上げるため、労働者は懸命に働いている」
「労働者の権利を攻撃し、労働者保護の法律を廃止するなど、政府の行動は世論と逆行している。ITFのグローバル世論調査は、交通運輸労働者を保護する法律に対する国民の支持が圧倒的であり、その声がさらに高まっていることを示している」
権利の弾圧は民主主義への脅威
労働者の権利に対する攻撃はますます常態化している。言論の自由、抗議権、ストライキ権の制限を国民が心配しなくてはならないなら民主主義は危機に瀕している。
市民の約3分の2(61%)が、言論の自由が現在制限されている、または将来的に制限される可能性があると懸念しており、半数以上がストライキ権(54%)と抗議権(56%)に対する現在または将来の制限を懸念している。
ほぼ10人に9人(89%)が、労働者は仕事中は保護されるべきだと考えており、81%が労働権や環境破壊について企業の責任を追及する法律を支持していることが、新しい世論調査で明らかになった。
ITFの パディ・クラムリン会長は次の通り述べた。「アルゼンチン、英国、その他の国々でも、ストライキ権が攻撃されている。紅海で船員が襲撃されている。働く人々が戦争に残酷に翻弄されている。移民漁民が人身売買され、英国沖で強制労働させられている」
「労働者は日々権利のために闘っているだけで、ますます攻撃の標的にされつつある。真の民主主義とは、国民の声に耳を傾けることであり、そのメッセージは明確だ。世界を動かす労働者と、そのサービスに依存する市民の双方にとって、交通運輸の公平なグローバルルールが必要だ」
さらに70%の回答者が交通運輸労働者のストライキ権を、82%が団体交渉権を認める労働法を支持しており、78%が組合加入権を擁護した。また、86%が交通運輸労働者の適正最低賃金を定める法律を支持している。
圧倒的多数が交通運輸労働者の社会的保護を支持しており、87%が手頃な価格で医療を受けられる権利や 適正な退職金制度を、86%が教育と出産休暇を、81%が失業手当を支持している。
「 生活費が高騰し、労働者の賃金が低迷する一方で、資本主義は野放しにされてきた。政府が企業の貪欲さに火をつけている。今こそ労働者のために立ち上がるときだ」とクラムリン会長は続けた。
AIの影響
この調査は、人工知能の影響についても初めて詳しく取り上げた。多くの人が、AIが職場に与える影響を警戒する一方で、労働者の利益のために政府がこれを管理できるかどうかについても懸念していることがわかった。
67%の人がAIによる個人データの収集を、62%の人がAIによる人間の意思決定の置き換えを、57%の人が自分の仕事の監視を懸念している。
4分の3(76%)が、パイロットが搭乗しない自動操縦旅客機に不安を感じている。
組合の要求は市民の支持を得ている
ITFの6つの要求(交通運輸労働者のためのITFのビジョンを含む)に対する市民の支持も圧倒的だった。
- 交運労働者の安全:89パーセントの人が、自国政府が交通運輸労働者を保護するために安全衛生法を改正することを望んでいる。
- 持続可能な交通運輸を:80%の人が持続可能な交通運輸に対する政府の投資の増加を求めている。
- グローバルサプライチェーンにおける企業の責任:79パーセントの人が、サプライチェーンにおける交通運輸労働者の虐待をなくすことを政府に求めている。
- 仕事の未来について労働者が声をあげる機会:81%の人が、交通運輸の雇用への投資を政府に求めている。
- 交通運輸労働者のための平等:77%の人が、経済的不平等の是正ために交通運輸が重要であると考えている。
- 交通運輸労働者の権利:87%の人が、自国政府が交通運輸労働者を暴力やハラスメントから守ることを望んでいる。
「向こう5年間のITFの方向性を定めるにあたり、労働者を確実に保護し、誰にとってもより安全で公正かつ持続可能な未来を築くために、我々は闘っていかなければならない。そのための市民の支持を得ていることは分かっている。交通運輸労組が社会で積極的な役割を果たすことが重要だと考えている人が69%もいるのだから」とコットン書記長は述べた。
以上
編集者への注記
ITFグローバル世論調査2024は15カ国の16,632人(アルゼンチン1,090人、オーストラリア1,078人、ブラジル1,064人、カナダ1,104人、フランス1,099人、ドイツ1,080人、インド1,032人、メキシコ1,064人、モロッコ1,047人、フィリピン1,129人、南アフリカ1,017人、韓国1,044人、トルコ1,056人、イギリス1,660人、アメリカ1,068人)を対象に実施された。
現地調査は調査会社YouGovによって2024年3月18日から4月12日まで実施された。アンケート調査はオンラインで実施された。数値は各国の成人人口(18歳以上)を代表する加重平均値である。各国の年齢、性別、地域の割合を反映させるために、割当法(クォータ)が用いられた。対象国はできるだけ多くの地域から選出し、調査会社YouGovが1,000人以上のサンプルを持ち、オンライン・パネルを保有している国から選ばれた。
その他の重要な統計
- 88%の人が、医療(92%)、エネルギー(89%)に次いで、交通運輸は最も重要な公共サービスの一つだと考えている。
- 81%の人が、政府が交通運輸産業の雇用創出に投資することを望んでいる。
- 66%の人が、意思決定への労働者の関与を増やすべきだと考えている。
- 69%の人が、自国の経済システムは富裕層を優遇していると考えている。
- 77%の人が、経済的不平等の是正のために交通運輸が重要であると考えている。
- 80%の人が、持続可能な交通運輸に対する政府の投資の増加を求めている。
- 76%の人が、排出量削減のための国の計画策定を望んでいる。
ITFについて: 国際運輸労連(ITF)は民主的で加盟組合主導の、世界で最も権威ある交通運輸労働者の組織です。150カ国の組合と連携しながら、労働者の生活向上のために闘い、組合員の権利、平等、正義の実現を目指します。ITFは世界中の交通運輸産業で働く男女16,500人の声を代弁しています。