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変化の時:メンタルヘルスは共同責任

ニュース

2021年10月10日(日)の世界メンタルヘルスデーに、ITFは交通運輸部門全体の利害関係者に、全ての労働者のメンタルヘルスを優先させる共同責任を認識するよう促した。

ITFは、政労使や交通運輸業界の国際機関を含む全ての関連する利害関係者の既存の取り組みを相乗的に活用し、協調的アプローチを取ることで、共通の理解を醸成し、現実的かつ持続的な変化を牽引する行動計画を策定することを呼びかけている。

 

責任を認識する

 

メンタルヘルスのリスクの高さは交通運輸部門全体で広く取り上げられ始めたばかりのため、ITFは企業に自らの責任を認識し、一丸となって改善をもたらすための努力を加速するよう促している。

 

運輸部門の労働者は概して、その性質と労働環境ゆえにメンタルヘルス問題の影響を受けやすい傾向があるため、他業種とは比較にならないレベルでストレスとプレッシャーを長らく経験してきた。とりわけ、船員、長距離トラック運転手、一部の鉄道労働者は、長期間家を離れて働くため、支援を求めることがより一層困難だ。様々なサービスや情報の利用も制限され、家族や友人とのコミュニケーションも取りづらいために、メンタルヘルスが損なわれやすい。また、交通運輸部門に存在する、メンタルヘルスに対する偏見により、労働者が自らの問題に取り組み、支援を求めることがより困難になっている。

 

こうした厳しい現実は、コロナ禍がもたらした先行きの不透明さによってさらに悪化した。交運労働者は、賃金引下げ、失業、病気、隔離期間の長期化などの問題に実際に直面している。不安の増大は、心理的苦痛を増大させるため、メンタルヘルス問題の発症リスクを高める。そのため、ITFはより多くの対策を早急に取る必要があると訴えている。

 

全てのの利害関係者が個々の学びを結集し、直接行動を起こす必要性は益々明らかになっているとITFは確信している。様々な報告書から、海運産業全体で働く者の多くが日々の活動に苦労している厳しい現実が浮き彫りになっている。2019年のコロナ禍が始まるずっと前に、ITF船員部会と船員トラストが、イェール大学に船員のメンタルヘルスとリスク因子に関する研究を依頼した。この調査によると、調査対象の船員の間で、「うつ状態」や「不安」がある人の割合はそれぞれ25%と17%だった。過去18か月で、こうした衝撃的な数値がさらに高まったことは間違いない。

 

海事業界の一部企業は、メンタルヘルスの課題に取り組むことは厄介な作業と考えるかもしれないが、今こそ企業が一丸となって行動を起こすべき時であるとITFは断固主張する。とりわけ、交運労働者は引き続きコロナ禍の余波への対応を余儀なくされているため、メンタルヘルスの支援について、より良質で一貫したアプローチを直ちに取るべきだ。

 

ITFのスティーブ・コットン書記長は、次のように述べた。「新型コロナウィルス感染症のパンデミックは、健康や家族に関するストレスや不安、社会的な孤立、心と身体の疲れなど、様々な面から海運労働者と広く交運労働者一般に影響を及ぼした。

 

コロナ禍で、ヘルプラインへのアクセスなどの限定的な措置が一部の企業によって実施されたが、世界メンタルヘルスデーの今日、ITFは一丸となってメンタルヘルスにしかるべき焦点をあてるよう、交通運輸業界に求めている。ITFが代表する労働者は、努力に見合うだけの評価を得られていないことが多いが、これまで以上に今、多くの支援を必要としている。交運労働者を落胆させてはいけない」

 

支援を続ける

 

ITFは、運輸部門全体にメンタルヘルス危機が広がっていることをを認識し、意識の向上、サポートの提供、変革を起こすことを目的とするグローバル・ウェルビーイング・プログラムを通じて様々な取り組みを構築し、実施を続けている。新型コロナウィルス感染症のパンデミックを背景に、船員たちの生活は極めて困難なものとなり、同プログラムを通じた継続的な支援がますます重要になっている。

 

コロナ禍がもたらした特殊な状況に対応するために、ITFは革新的な「振り返り、認識し、支援を求める」をテーマとしたデジタルキャンペーンを開始した。このキャンペーンでは、Facebook、Twitter、Instagramなどのソーシャルメディア・プラットフォームを利用して、ストレス、うつ、その他のメンタルヘルス問題をいかに管理するかについて情報やアドバイス、サポートを提供している。このキャンペーンは、3つの主要な柱に基づき、船員が直面する課題と、それが船員のメンタルヘルスに及ぼす影響について振り返り、それに対応できるようにし、ストレスの初期の兆候と症状を認識してその影響を軽減し、最終的には支援を得るために手を差し延ばすことを奨励する。また、受けられるその他のサポートに関する情報も提供する。

 

同プログラムが提供するその他の常設的な取り組みには、ITF加盟組合が、メンタルヘルスを含むさまざまな健康問題に関するクオリティの高い24時間年中無休の電話相談を組合員に提供できるようにするための訓練と技術サポートを加盟組合に提供している。このプログラムのもと、ITFはインド船員組合(NUSI)、フィリピン船舶職員部員組合(AMOSUP)、インド前進船員組合(FSUI)、スリランカ船員組合(FSUI)、トルコ船員組合(TDS)などの大規模な船員組合と協力し、効果の最大化を図っている。

 

さらに、ITFは、さまざまな運輸部門の加盟組合とも協力し、様々なメンタルヘルスの問題について定期的にFacebookのライブセッションを開催しており、増え続ける相談件数に引き続き対応している。各ライブセッションには何千人もの交運労働者が参加したことに加え、10万回以上視聴されている。

 

船員とその家族が利用できるカウンセリングサービスがあるという認識を高めるため、ITFはITF船員福祉ディレクトリを作成した。これは、ITF加盟組合や他の組織に向けて、利用できる資源を統合し、孤立した環境で働く船員が、貴重なサービスをできるだけ簡単に受けられるようにするための取り組みだ。

 

このプログラムではまた、様々な健康問題に関する実践的なアドバイスを記した一連のファクトシートやガイダンスシートをまとめてライブラリ化し、提供している。サポートを必要とする全ての船員が可能な限りアクセスできるよう、全てのコンテンツを簡略化している。

 

ITF船員アプリは、船員の特定のニーズを念頭に置いて開発された。無料でダウンロードでき、いつ、どこからでもアクセスできる。同アプリは実用的な情報ハブを提供し、最近、ストレスやうつなどの重要な健康問題に関する重要なアドバイスを提供するために改良された。また、さらに、船員が支援を得たい場合に連絡できるITFの連絡先も提供している。

 

ITFが最近実施した調査では、船員とのコミュニケーションを取る最も効果的な手段はFacebookであることが判明した。これを念頭に、ITFウェルビーイング・プログラムでは、Facebookページを利用して、船員やその他の交運労働者に福祉関係問題について最新情報を提供している。一方、組合員たちは、具体的なニーズに関するサポートやガイダンスを得るために、関連するFacebookメッセンジャーを頻繁に活用してITFに連絡してくる。

 

ITFマリタイム・コーディネーターのジャクリーン・スミスは次のように述べた。「メンタルヘルスの悪化は、長らく海運産業で深刻化してきた。船員のメンタルヘルス問題は、多くの場合、劣悪な労働条件や長時間労働、金銭的な心配、家族や友人から離れて多くの時間を過ごすことからくる孤独感によって誘発される。メンタルヘルスに関する明確で強力なガイダンスを実施し、適宜それを既存のポリシーに織り込んで欲しいとの、より幅広い交通運輸業界への呼びかけを強く支持します」

 

メンタルヘルス問題への対応には教育が不可欠だ。予防、早期発見、早期介入を行うことがしばしば、良い結果につながる。だからこそ、ITFは引き続きメンタルヘルス問題に焦点をあて続け、情報共有と助言を訓練生のレベルでも行っている。長年にわたり、ITFは専門知識を利用して、世界中の海事学校で教えられているストレス管理などの科目をカバーする福祉モジュールを開発してきた。ITFは、加盟組合や海運関係の学識者と協力し、インド、フィリピン、スリランカ、バングラデシュ、メキシコ、チリ、ペルー、コロンビア、パナマ、タイ、ウルグアイ、ウクライナなどの国でこれらのモジュールを導入した。

 

さらに、ITFウェルビーイング・プログラムは現在、コロナ禍にまつわるストレス要因に直接対応している労働組合のために、応急処置や(仲間どうしで啓蒙を行う)ピア教育者のためのメンタルヘルス問題に関する包括的な訓練モジュールを開発している。このモジュールは、インドの路面輸送や海事関係の組合によって実地ドテストが行われており、今後数週間以内に正式に立ち上げられる予定だ。交通運輸セクターの労働組合の教育担当者、オルグ担当者、青年委員会と女性委員会の委員が、求められる役割を果たせるよう訓練されることになり、現在、コロナ禍で高まっているストレスに起因する長期的なメンタルヘルスや心理社会的問題を軽減する上で極めて重要な存在となっていくだろう。

 

 

より明るい未来を見据えて

 

運輸部門全体でメンタルヘルスのサポートが徐々に改善している一方で、労働者の間でさらなる被害を防ぐためには、変化を加速させる必要があるとITFは考えている。

 

現在、メンタルヘルスを取り巻く問題に利害関係者それぞれが個別に対応しているため、重要な行動を起こすことが妨げられている。もっと前進するための方法を探るべく、ITFは3段階のアプローチを呼びかけている。第一に、組合、企業、政府機関を含む全ての関係する利害関係者が、メンタルヘルスを取り巻く問題について共通の理解をもつこと。第二に、彼らに共同責任があることを認識し、利害関係者が現在、既に行っている取り組みの間で相乗効果を生み出すこと。第3に、全ての利害関係者が集まって、現実的で永続的な変化をもたらすプログラムと取り組みを開発するための共同作業を開始すること。

 

ITFは、このアプローチが進化し、求心力が高まることで、関係する全ての利害関係者が、運輸業界の性質と環境を考慮して、メンタルヘルスを職場の問題と見なすようになると確信している。

 

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