世界最大の交通運輸労働者組織の国際運輸労連(ITF)は、ニュージーランド海事労組(MUNZ)と共に、オークランド港がコストのかかる自動化を断念する決断を下したことを支持している。
ITFのパディ・クラムリン会長兼港湾部会議長は、オークランド港が昨日、ファーガソン・コンテナターミナルの自動化プロジェクト中止を発表したことを歓迎し、次のように述べた。
「『オークランド港やサプライチェーンに従事する多くの人々に安堵をもたらす前向きな決定だ』とするオークランド港のロジャー・グレイCEOの言葉を繰り返したい」
「オークランド港とその唯一の株主であり所有者であるオークランド市にとっての過酷な現実は、そもそも港湾管理者が港の容量、生産性、収益性を向上させるための決定に労働者の知識と専門性を反映させていたならば、自動化の決定自体も、また、6,500万ニュージーランドドルの損失も決して起こらなかっただろうということだ」
この自動化の大失敗が経営陣のレビューや「独立系」専門家の助言の中で言及されることはないだろうが、ここから得られた大きな教訓は、労働者の声に耳を傾けるべき、ということだ。オークランドのような港で重労働をする人々が「このプロジェクトは目的に適っていない」、「技術面の準備がまだ整っていない」、「この技術は危険で、自分たちの命が危ない」と言うのなら、彼らの声に耳を傾けるべきだとITFのクラムリン会長は述べる。
「オークランド市がここから教訓を学んだことを行動で示すことを期待したい。そうなれば、彼らの最初の行動は、オークランド港の取締役会に労働者代表を加えることになるはずだ。この港を誰よりもよく知っている人たちの意見を聞くだけでなく、彼らの団体としての意見を代表し、意思決定の場でその声が尊重されなくてはならないことを、これ以上証明する必要などあるはずもない」とクラムリン会長は述べる。「オークランド港は労働者の声を無視することの代償を痛感した。他の港湾事業者も同じ過ちを犯さないよう注意すべきだ」
自動化とオークランド港:予算オーバー、工期オーバー、誇大宣伝
2015年にオークランド港が初めて自動化計画を発表した際、ちょうど組織港湾労働者との争議が長引いていた。経営側の話では、自動化プロジェクトの初期段階では、港で働く320人の荷役労働者のうち、50〜70人ほどが自動車両に置き換えられ、2019年のプロジェクト完了予定時期までには、さらに多くの労働者が代替されるということだった。2019年までには、自動化によってコンテナ処理能力は年間90万TEUを超え、約160万TEUまでアップするだろうということだった。
しかし、開始から7年経過した現在でも、同プロジェクトは完了していない。それどころか、遅れや安全面の懸念もあり、実際に港の生産性は下がった。
2020年11月、新しい自動ストラドルキャリアが制御不能となり、複数のストラドルキャリアに激突した。2021年6月、また別のストラドルキャリアがソフトウェアの不具合で「大暴れ」して、コンテナに衝突した。オークランド港運営会社は、安全審査の結果を待つ間、機械の使用を一時停止した。ストラドルキャリアはこれまでもソフトウェアの不具合で定期的にオフラインになってきた。
1台のストラドルキャリアの重量は、荷を下ろした状態で70トン、満載したコンテナを運んでいる状態で100トンを超え、埠頭を時速22キロで走行する。これは簡単に人間一人を殺せるスピードだ。
ニュージーランドなどの富裕国の消費が好調な回復を見せ、コンテナ荷役需要も記録的に高まっている今、問題だらけのファーガソン・コンテナターミナルの自動化プロジェクトが、オークランド港全体の貨物処理能力(時間当たりのコンテナ処理数で測定)の足を引っ張っていることが証明されたのだ。
欠陥だらけの自動化がコストを増大させていることを地域社会に認識させる際、港湾労組の調査は極めて重要
ニュージーランド海事組合(MUNZ)のクレイグ・ハリソン全国書記長は、今日、ITFと世界の港湾労組の国際的連帯が、港の取締役会がターミナルの自動化停止を決定する上で極めて重要だったと述べ、感謝の意を表明した。
「経営陣が自動化計画を発表するや否や、我々はパディ・クラムリン会長とITF港湾部会に連絡した。数週間のうちに、クラムリン会長はITF自動化タスクフォースの代表団を率いて、ニュージーランド政府や大手の業界プレーヤーと会談してくれた」とハリソン書記長は述べる。
「ITFや世界の仲間が起きると言ったことは全て起きた。自動化で生産性は上がらないと会社に警告した。その警告は正しかった。自動化により、輸出者にとっても、輸入者にとってもコストは上がることになるだろうとも警告したが、この警告も正しかった」
「経営側はこうした事実を無視したのだ。彼らの目的が生産性の向上ではなく、港から組織労働者を排除することであることは、当初からは明白だった」とハリソン書記長は述べる。
自動化プロジェクトを通じて、MUNZはニュージーランドの国民、特にオークランド市議会と企業に対して、自動化推進が引き起こした混乱がコスト上昇に直接的に影響していることを示す地域キャンペーンを展開した。
「自動荷役機械のソフトウェアの不具合や、その他の原因で港の荷捌きが遅れているため、輸出入業者は出荷の遅れや埠頭で停滞するコンテナの高額保管費を請求されている」とハリソン書記長は語る。「船社のマースクは港の渋滞のために停泊を余儀なくされた船舶のコストを回収しようと、オークランド港を利用する顧客に対して400ニュージーランドドルの追加料金を導入したほどだ」
「自動化プロジェクトは目的に適うものではないとオークランド港が気づくのに7年かかった。同港がMUNZやITFの言うことを聞いていれば、オークランド市の納税者が何千万ドルもの損失を被ることもなかったことは実に残念だ。そこで無駄にした資金で新しい図書館を建てたり、子供のために公園を作ったり、電車を修理したりできたはずだ」とハリソン書記長は締めくくった。
Notes:
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