2020年1月以来、韓国で発効している セーフレート制度に関する研究から、同制度がうまく機能していることが判明した。
セーフレート制度は、路面運輸産業における公正な賃金と労働条件に関する基準を法律で設置するもので、様々な業務契約チェーンのトップに君臨する企業が責任をもって確実にこの基準が満たされるよう担保する制度だ。
最低限のセーフレートが支払われることで、路面運輸産業に従事する運転手は、危険な運転等を導きかねない上からの圧力から解放される。セーフレート制度はまた、運転手が自立し、家族を養うことを可能にする一方、疲労したまま運転を続けたり、スピード違反や過積載をしなくてはならないというプレッシャーから決定的に解放される。今回の新たな研究から、セーフレート制度の根底にある理論が、韓国では実践面で機能することが示された。
韓国のセーフレート制度はコンテナやセメントを輸送するオーナードライバーに適用されている。制度実施から最初の8か月の期間について行われた本研究は、セーフレートの導入前後に実施た2回の運転手を対象とした調査をベースとしている。
「制度の導入で、コスト削減のプレッシャーが軽減されたと運転手が報告している」とITFのノエル・コード内陸運輸部長が述べる。「疲労、スピード違反、過積載はトラックの衝突事故の三大要因だが、これら全ての面で改善が見られた。この研究から、セーフレート制度が韓国でうまく機能していることが確認できた。韓国でうまく行くなら、世界中でも実践されるべきだ」
セーフレート導入後の今回の調査から主に以下が確認できた:
- トラック運転手の賃金が平均3.6%上がった。
- 運転中に眠気を感じる運転手の割合が29%減少した。
- 運転手による過積載が39.9%減少した。
- スピード違反をする運転手が33.6%減少した。
「賃金は上昇したが、韓国のトラック運転手の賃金は、全国の交運労働者の平均賃金のわずか56.8%にしか満たないことも研究から判明した。したがって、まだまだ改善しなけらばならない部分は多い」とコード部長は述べる。
今回の研究から、顧客企業や輸送会社によるセーフレート制度違反も絶えず起きていることも分かった。同制度がきちんと強制実施されるなら、道路の安全や路面運輸産業の持続性の面でさらに大きなプラスの影響が出るだろう。
研究の報告書はセーフレート制度を恒久化し、他の部門にも拡大するべきとする結論を出している。また、労働組合や他のステークホルダーが参加することで、制度の監視と強制実施を強化すべきだとしている。さらには、多数のステークホルダーが関わる業務契約について、賃金水準の設定も加えることにより、同制度を改善するべきだとの提案も出されている。
注:
- 『韓国のセーフレート制度の初期段階の影響の分析と持続可能な実施に向けた提言』と題する本研究の結果は、韓国公共交通サービス運輸労組(KPTU)の貨物トラック連帯部門(KPTU-TruckSol)と韓国セーフレート研究グループ(KSRRG)が国際運輸労連(ITF)の支援を受けて出版した。
- 商業車両の運転手に公正な賃金を支払うことで道路の安全性は向上するという、世界の学識者や専門家の過去数十年に行ってきた研究が正しいことが確認された。また、2019年に採択された 路面運輸産業におけるディーセントワークと道路の安全の促進に関するILOガイドライン の原則がセーフレート制度に盛り込まれていることも確認された。
- 同研究に関する質問事項は、韓国セーフレート研究グループ(KSRRG)のバク・ドージョ部長( baekdj1130@naver.com)宛てにどうぞ。世界中でセーフレート制度を確立することを目指したITFの取り組みに関する詳しい情報は、ITF 内陸運輸部会(inlandtransport@itf.org.uk)までお問い合わせを。