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斯う解つて見ると、猶々(なほ/\)丑松は敬之進を憐むといふ心を起したのである。図(はか)らず丑松は敬之進の家族を見たのである。急に、意外なところに起る綿のやうな雲を見つけて、しばらく丑松はそれを眺め乍ら考へて居たが、思はず知らず疲労(つかれ)が出て、『藁によ』に倚凭(よりかゝ)つたまゝ寝て了つた。五人の子の重荷と、不幸な夫の境遇とは、細君の心を怒り易く感じ易くさせたといふことも解つた。彼(あ)の可憐な少年も、お志保も、細君の真実(ほんたう)の子では無いといふことが解つた。斯(か)う言ひ聞かせて、軈(やが)て持主は牛の来歴を二人に語つた。夜の休息(やすみ)を知らせる鐘が鳴り渡つて、軈(やが)て見廻りに来る舎監の靴の音が遠く廊下に響くといふ頃は、沈まりかへつて居た朋輩が復(ま)た起出して、暗い寝室の内で雑談に耽つたことを憶出した。
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